pua nānā lā

おひさまのような花

◇Heavenly Psycho

 

平易なコード進行と凝っているとは言えないアレンジ、
シンプルな言葉で紡がれた歌詞…

平凡だけど、道端に咲く一輪の花のような実直さで
聞く人の心まで照らすような強い光を持った歌です。


気になるのは曲名。

なんとなく耳触りのいい英単語を繋げているものの、
直訳すると多少無理して相応しいと思われる意味をとっても
heavenly=神聖なpsycho=精神と何だかしっくりこない…

当時色々と考えを巡らせてもしっくりこなかったこの言葉が、
実は最近ようやく腑に落ちたんです。


それは某番組で、
ジャニーズJr.がこの曲をカバーしているのを見た時。


イントロに重ねられた
psycho..」という歌詞のリフレインに合わせて
一人ずつの表情を順番に抜くカメラワークで、
それぞれがすごく晴れやかないい顔をしていて。

印象的で、すきだなぁと思って何度も繰り返し聞くうち、

この歌詞が頭の中で
自然と変換されていることに気が付きました。


さぁ、行こう」…
さぁ、行こう」…


それで、あぁ、なるほどと。

きっと本家ファンの方々はとっくに気付いているのだろうし
もしかすると本人たちがどこかで
話したこともあるのかもしれないけど、
私にとっては10年来の謎が解けたという思い。(笑)

そして同時に、今まで見えずにいたこの歌の奥深さ、
イントロとサビに置かれた
この言葉が生み出す立体感に鳥肌が立ちました。

 

「さぁ、行こう」という今この瞬間の決意。


これが先に出てきているからこそ続くAメロの
いつも夢に選ばれないまま 日が昇り沈んでいく日々」が
過去の回顧だということがわかるんだなぁと。


それはまるで映画のようにドラマチックな時間の遡及です。

主人公はもちろん歌声の主で最初のシーンは今このステージ。
曲が始まろうとしたまさにその瞬間、
いままさに掴もうとしている夢を追いかけた日々に遡る映像…


そんなイメージが頭に浮かびました。


そこに自分の姿がなくても簡単に回る世界、
心細さややるせなさに叫んだ声も
空に響いては虚しく消えていきます。

だけどここには必要としてくれる人がいる。
繋いだ手のぬくもりが一人じゃないという勇気をくれる。

 

だから、「さぁ、行こう」。

 

雲が去りぱっと明るい日差しが差してくるような
サビのメロディーと共にたどり着いた今この瞬間という場面、
それを見届ける観客となる私たちのことまでも
手を引いて誘うような頼もしさがこの言葉にはあります。


やっとここまで来たという喜び、
目の前に広がる夢にまで見た景色に自然と溢れる泪。

だけど、今はまだ未来に向かう道の途中。
彼らにとってここはゴールではありません。


心を満たす晴れやかな気持ちと
それに満足せずさらに上を目指そうという思い、
そんな精神状態を作詞者は
heavenlyという形容詞で表したのかなぁと。

そしてそれらがpsychoという単語の響きに
託されているのだということを、
なんだかすっと理解できたんですよね。


踏まれても雨に打たれても耐え忍び、
やがて太陽を見据えて咲いた名もない花が
人の心を励ますように。
 
この素朴な曲とそれを歌う若者の
まだ届かない夢をひたむきに追いかける純粋さは
この先さらに時を経ても尚変わらずに聞く人の心を惹きつけ、
胸が震えるような勇気を与え続けてくれる気がします。

 

end.